ピピン 第5話

連続ブログ小説
ピピン


第5話 出したり引っ込めたりのあいつ


~前回のあらすじ~
 ペリフィンさんが「お代はいらないですよ」という意味にとれなくもないことを言ったから、僕は店を出ようとしたのに、そのペリフィンさんが邪魔するんだぜ?


 ドアを出ようとする僕の前に回りこんだペリフィンさんは、闘牛のような顔を闘牛そのもののようにして、
「お金払うのを忘れていますよ」
 と言った。顔のわりに穏やかな言い方がなんだかこわい。
 それはいいとして、僕は耳を疑った。
「あれ?さっきお代はいらないって言ってませんでしたっけ?」
「そんなことは言ってません。ただでさえ女房がジェンガリゴラスを習いはじめて、あいつの気に障ることを言おうもんなら胴回しボバルヴィオをかましてくるから言葉には気をつけてるっていうのに」
 ペリフィンさんはどういうつもりなんだろう。一度示した善意を自分で否定するなんて。
 僕は脳みそをフル回転させた。IQ18万とんで140の自慢の脳みそを、だ(あとでちゃんと計り直したら110だったけど、そんな数字なんかリグレオ・イブチのつゆだ)。
 僕の脳内で、角が24あって珠がある意味での野球盤みたいな形をしているとんでもなくユニークかつドルガバビリティも高いデザインの生ソロバンが、世にもグロテスクな動きと音で演算をはじめ――
 時間にしてコンマ2秒。僕は全てを理解したのだった。
「わかりました、お代は払わなきゃね」
 お代は払わなきゃいけないのだ。僕はレジでお金を払った。
 あーあ、何で勘違いしちゃったんだろう?何で・・・・・・。
 僕がこんな、勘違いなんて・・・・・・。
 ??・・・・・・不可解だ。
 あれ?僕が勘違いなんてするわけないよ。だってIQ18万とんでるもの。
ということは!
 僕はお釣りを受け取りながら言ってやった!
「やっぱりお代いらないって言ってたでしょ!男が一度言ったことを覆すのはみっともないですよ。全くボチブリリくさいったら」
「何を勝手に勘違いしてるんですか?お代は受け取りましたから、お引取りください」
 あっ!すぐ言い返してきた!
 言い方は柔らかいけど、ちょっと怒ってるな。何様だ!でも負けないぞ。こわいけど。
「いや、お代は返してください。ずるいですよ、善意を出したり引っ込めたり、あなたはあれですか?そういう動きをする――」
「何を言ってるんですか。本当につまみだしますよ?」
「あー、やっぱりですね。やっぱりあれですね。この、あれ!」
「あ、あなたね!おかしいですよ!」
「何ー!?おかしくないですよ!」
「おかしいです!」
「おかしくない!」
「おかしい!」
「おかしくない!」
「おかしい!」
「おかしくない!」
「おかしい!」「おかしくない!」「おかしい!」「おかしくない!」「おかしい!」「おかしくない!」「おかしい!」「おかしくない!」おかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくないおかしいおかしくない――

 混ざり合っていく僕たち!気持ちいい――


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