連続ブログ小説

喫茶ダブルドラゴン 第5話 前篇

正午過ぎ。喫茶ダブルドラゴンにはマスターの竜田隆一しか居ない。昼の光が窓から差し込むが、店の表には「CLOSE」の札がかかっていた。 ダブルドラゴンはいつも13時にオープンする。 開店準備を終えて、仕入れたばかりの珈琲豆で珈琲を淹れる。中煎…

シューターの憂鬱 大庭サキ編 第2話

STG「マッスル☆みんち」をプレイするのは大庭サキというシューター。 ワンコインで次々とステージをクリアし、ほどなくラスボス戦に突入した。 対峙するのは自機であるチェーンソウを抱えた少女と、牛面人“アルニー・ゴールド知事”。 『合挽きショット!…

シューターの憂鬱 大庭サキ編 第1話

郊外にオープンした大型ショッピングモール――「クレスト」。 そこへ行けば全てが揃う、全ての娯楽がそこにある。 住民達の夢の国。 行きとどいたサービスと選りすぐりの専門店で、住人たちにスマートなライフスタイルを提案。仕事に家庭に、趣味に遊び。皆の…

ロケットパンチが撃てるだけ 第2話

俺の特技はロケットパンチ。 ロケットパンチは男の子の憧れ、正義の象徴である。 が―― ときどき俺の意思と関係なく、勝手に正義を執行するので困る。 「殺し屋サン、あたしをウッテ」 ショートカットの女が無感情に言う。 「マッテロ。今らくにシテやる――」 …

喫茶ダブルドラゴン 第4話

年代物のファブリックをモダンなセンスで配置した直方体の空間。真空管アンプから流れるジャズが、使いこまれた木の調度品に染み込んでいく。 町外れにあるその小さな喫茶店は「星屑珈琲店」という。 「お待たせしました」 白いシャツを着た若い男性がテーブ…

喫茶ダブルドラゴン 第3話

からからん―― 「開いてるぅ?」 ドアベルを鳴らして入って来たのは派手なハイヒールの女だった。ロング丈のダウンジャケットから覗く素脚のラインが印象的だった。 「今日はもう終いだ。“CLOSED”の文字が見えなかったのかよ」 喫茶店のマスター、竜田…

ロケットパンチが撃てるだけ

履歴書の特技欄に「ロケットパンチ」と書いたらバイトの面接落とされた。 面接担当の人が履歴書を見て、 「このロケットパンチっていうのは?」 と訊くので俺は実演して見せた。もちろん普通に撃ったら壁にぶつかって手の骨が折れるので、ロケットパンチ(手…

喫茶ダブルドラゴン 第2話

ぱたん… ドアベルもならさずに静かに店に入ってきたのは、ジーンズをはいた女性だった。ゆるやかな足取りでフローリングの床をわずかもきしませずに歩いて、カウンター席に座る。「いらっしゃい。ご注文は何にします?」 カウンターの中から男が声をかける。…

喫茶ダブルドラゴン

一年ぶりにホームページのほうを更新。小説書きました。>> 喫茶ダブルドラゴン

「よしみ」習作1

練習です。絵的なダイナミックさをがんばってみました。

よしみ 第3話

連続ブログ小説よしみ第3話 YAKEKUSOライブ in やまかがし~あらすじ~ いまから大事なコンサートだっていうのに、マネージャーがどっか行ってしまった!新人アイドルの彼女は心の支えを欠いたままステージに出なくてはならない! ここ、立浜やまかがしホー…

連続ブログ小説 目次

このブログのメインコンテンツのひとつである『連続ブログ小説』の目次です。シリーズの簡単な解説と、各話のタイトルを紹介しています。まだ数は、本当に少ないですけど、これから増えていくはずです。----------------------------------------:: よしみ :…

よしみ 第2話

連続ブログ小説よしみ第2話 カーニバル・イン・ザ・カー ドン、ドン、トコトン、ツントコ、ドン、ドン。 大変だ!大変だ! わっしょい!わっしょい! お祭りである。 活気につられて集まった、通りを埋め尽くす見物客をかきわけて、踊る女や神輿を担ぐふん…

ピピン 第5話

連続ブログ小説ピピン第5話 出したり引っ込めたりのあいつ~前回のあらすじ~ ペリフィンさんが「お代はいらないですよ」という意味にとれなくもないことを言ったから、僕は店を出ようとしたのに、そのペリフィンさんが邪魔するんだぜ? ドアを出ようとする…

ピピン 第4話

連続ブログ小説ピピン第4話 え?何でにらむの?~前回のあらすじ~ パン職人のペリフィンさんには何を訪ねても、いつの間にか奥さんのグチの話をはじめてしまうからラチがあかない! ペリフィンさんに僕と同郷ですかと訪ねたら、ペリフィンさんは、「知りた…

ピピン 第3話

連続ブログ小説ピピン第3話 後悔~あらすじ~ カフェで食べたパンがおいしかったので、ウエイターに頼んで呼んでもらったペリフィンと名乗るパン職人が、なんと巨人族――≪マコグリュエ・ベリエナハン≫だったのにはたまげた! びっくりしたけど気を取り直して…

ピピン 第2話

連続ブログ小説ピピン第2話 「あっ!」~あらすじ~ お昼に町を散歩していたら、どこからか悲鳴が。気になったけど腹ペコだったのでカフェでパンを食べたら、そのパンがなんともスーパーだったのだ!おいしくて懐かしい。これを作った人はどんな人だろう?…

ピピン 第1話

連続ブログ小説ピピン第1話 なんてパン! ぎゃあああああ!! 悲鳴だ。周りの空気を引きちぎりそうな悲鳴が遠くで聞こえた。性別も判別できないくらいの、身体中から搾り出されたような声だった。 何があったんだろう。 行ってみよう。 僕はパントテン地方の…

よしみ 第1話

連続ブログ小説よしみ第1話 万事休す!? とくんとくん…… うるさいくらいの鼓動。 舞台袖で自分の出番を待ちながら、極度の緊張で震えが止まらない。 こんな状態で大勢の人の前で歌なんて歌えるの? 今の彼女は、これから2000人もの観客を魅了するアイドル…