短編ブログ小説

そこに行きたかったから行った男

とある大学のラボに、男と、女。 「爆発ってなんだと思う?」 と男は言った。 「一瞬に大きなエネルギーが生まれること」 と女は答えた。 男は手元のスイッチを押した。 ピンポン、と電子音が鳴る。 「正解」 男はさっき押したスイッチの隣のスイッチを押し…

ホワイト・アウト・セッション

その小さなホルモン屋は、白い煙が充満していてもうホルモン屋なんだか何なんだかわからなくなっていた。 何人かが同時にホルモンを焼くとすぐにこうなる。 風呂に入っても丸1日は身体から匂いが消えない。 「でもうまいんすよね、ここのホルモン。ねっ、津…

みんなで食べよう恵方巻き

「準備はいいですか?」 壇上から呼びかけるのは、この場を取り仕切るパンツスーツの若い女――真希子。 目前にあつまった100人が、真剣な面もちでうなずいた。 町の公会堂である。 壇上にいるのは真希子と、同じくスーツを着た丸まると太った男――恵太。そ…

いちご大福

「先輩」 「はい、何でしょう」 後輩に対してつい敬語になってしまうのは、その後輩がめちゃめちゃ可愛い女の子だからである。小さい顔にきらきらした大きな目か魅力的。 別にその視線に特別な感情が込められてはいなくても、ただ見つめられるだけでどきどき…

サターン

白紙。 まっさらな紙。 何も書かれていない紙。 何でも描くことのできる紙。 森羅万象がそこで生まれる可能性のある紙。 無限の可能性。 無辺の拡張性。 さあ、描くが良い! 世界を構築するが良い! 神のちからを行使するが良い!

霧の湖で

短編ブログ小説 霧の湖で いま就活してるんですが、 両親の知り合いのコネで 地元でいい働き口を紹介してもらえるかもしれない。 その職場が湖の近くにあるらしいので、 とんとん拍子に話が進んだとした場合の 自分の未来のビジョンを想像して書きはじめまし…

対象K

前の記事でも書いた バイト先の店長が変わったことについて、 もうすこし思うところがあったので書いていたら、 あさっての方向に向かってふくらんできたので 小説形式にしました。 たのしい職場だし、みんないい人ですよ。

対大みそか

なんだかんだ言ってもいつもどおり日が昇って沈むだけなのに、今日の24時00分は、そう安易にはまたげない空気を持っている。大みそかというやつは。 日記帳に12月31日の日記を書いていても、なにかいつもと違う特別なことを書かなくてはいけないよう…

ただのこういう話

「おはようございます」 辰夫はあいさつをした。しかし結果的に皆の耳に響くのは、《パァァ……》 という声とも音ともつかないものだった。太陽の光の音というものが存在したとすれば、この辰夫の発した音が近いものであっただろう。 辰夫は有能だった。有能で…

アイタイア

短編ブログ小説アイタイア~まえがき~いつもと違う朝に遭遇したものに、多感な少年は何を見るか?展開がちょっとスローで、かつ読者置いてけぼりの名ばかり小説。

耳をすませて路地を抜ければ

短編ブログ小説耳をすませて路地を抜ければ~まえがき~ ほんのちょっとだけおかしな街の、ほんのちょっとだけおかしな中学校でくりひろげられる、青春グラフィティです。 金曜ロードショーでジブリのアニメ映画『耳をすませば』を見て触発されて書いた、似…