ツイッターの文字数制限ってだいじ

ツイッター楽しぇーーーー!!!

ってなる人と全然ならない人って

顕著にあらわれてきそうだ。

けっこう想像力いりませんか。

友達とか家族とか、

深い知り合い同士って

ちょっとしたことに、

へぇぇ~、ってなる。

ぼく25歳ですが、

同い年の友達の、その友達が結婚して、

友達はその友達の結婚式に出席するんだって。

へーー、おっとな~!

とぼくなんかは、

わあ、なんか大人みたいやん!

と思ってちょっとテンションあがる。

ぼくの周囲にその手の話は基本的にないし。

他人の今なにしてる話を楽しめるのって、

アイコンと短い文章だけのツイートから

顔見知りくらいの具体的な人物像が想像できてるから

楽しいのかな。

それだと人となりが一般的によく知られている有名人が

たくさんフォローされてるのも納得がいく。

つぶやきがつまらなかったらフォローはずされるだろうけど、

基本的にあの次代のコント職人○○が言っているってだけで、

おもしろく読めるから、

フォロー数は伸び続ける。

まあ想像力があってもなくても、

ひとつのトピックについてたくさんの人と

ああだこうだつぶやいたり、

自分のつぶやきに対してレスついたりしたら、

嬉しいし楽しいです。


 そこまで書いて彼はキーボードをたたく手を止めた。部屋のドアの外から、かりかり、と引っかくような音。

「こらバーザム。吉田はいま忙しいのよ」ドアの外で妻のケイコちゃんが誰かをいさめている。

 吉田と呼ばれた彼は腰をあげてドアを開けた。すぐさま足下を白い動物がすり抜けていった。猫のバーザム。まっしろい雌猫である。ドアをかりかりしてたのはこいつ。

「あら、邪魔にならない?」

 開いたドアの目の前に洗濯物満載のカゴを抱えたケイコちゃんがいた。

「うん大丈夫。ちょっと気分転換したかったし」と、彼は頭をぽりぽりと掻いた。

「吉田がそういうならいいけどね」言いながらケイコちゃんは部屋を覗き込む。バーザムはソファの真ん中を占拠して、まるくなっていて、目を閉じていた。「なんだ寝ちゃった」カゴを抱えたまま肩をすくめる。

 ケイコちゃんは家事に戻って吉田は再びパソコンに向かった。

 さっきまで書いた文章をためつすがめつ――

「あれ」

 言葉どおりの顔をする。

「これ書いたの誰?」

 へーー、おっとな~! って、なに?

「んんん」

 ブログの見知った管理画面に、入力フォームの見知らぬ文章。どういうことでしょう。

 吉田は椅子に座ったまま体をひねって、背後のソファで丸くなっているバーザムを見やる。

「どういうことでちょうねえぇ~」

 困ったときは猫に聴け。喫茶ロッキー・トーンのマスターの格言だ。

 吉田はソファの前に膝をついて、バーザムの寝顔を眺める作業に移ることにした。迷ったときは猫を見てろ。これもマスター。

 猫は睡眠時、空間をゆがめる。光をまげる。錯視を起こさせる。と吉田は思う。

 バーザムの寝顔を見てると、愛らしくて愛らしくて、だんだん視界いっぱいになってくる。別に顔を近づけてるわけじゃないが、猫以外の情報がカットされて残った部分が大きく鮮明に見える。そうじゃないか。

 何秒間そうしていただろうか。10秒? 20秒? 実際には15分経っていたが気にしない。

 吉田はまたパソコンに向かってブログ管理画面のウィンドウを最小化、デスクトップから「=^ω^=」フォルダを開く。次いでウィンドウに表示される無数の画像ファイル。そのうちのひとつをクリックした。

 画面いっぱいにまっしろい子猫の姿が写し出された。バーザムがちいさいころの写真だった。駅前の雑貨屋で買ったフルーツ用のバスケットに入って、前足を縁に乗せて顔をだすバーザム。寝ているケイコちゃんの横で同じポーズで眠るバーザム。

 慈愛。吉田の感情がそのニ文字で埋まっていく。

「吉田ぁ。ちょっと出かけてくるけど晩ごはん何がいい?」

 リビングからケイコちゃんの声。

「ツナで。ツナ缶で」

「あぁ、わかったツナサラダにするわー。あと適当になんか作るね」

 猫を見てると猫の気分になるのだろうか、ツナ缶が異常に食べたい気分になった。

 バーザムのウィンドウを閉じた。見知らぬ文章が入力された管理画面のウィンドウを開き、その文章を消去した。楽しぇーーーー!!! ってなんでしょう。デリート。

 ――と、

 バーザムがデスクの上にジャンプしてきた。ケイコちゃんと喋ったときに起きたのかな。吉田の顔を見上げて「にゃあ」おなかがすいたらしい。

 なんだか、お前はいいなあ、と吉田は思う。ちょっとだめなくらい、いろんなことがどうでもよくなる。何か起こりそうなふりして結局なんにもないとか、着地点が決まってて飛びたったのかと思ったら出発点すらよくわかってなかったりとか、そんなの、まあいいじゃない。という気分だ。

「とっておきの缶づめがあるぞ」

 吉田はキッチンに向かった。バーザムもついてきて、ごはんがわかったのか先にキッチンに駆けて行った。

急にねこ飼いたくなったなう。