ちからの同時発生と収れん

バイトの同僚の女性に

とても感情豊かな方がいる。

感情と表情が豊か。

ぼくが何か言って

すごくいい笑顔で返事してくださるが、

直視できない。

直視すると笑ってしまう。

いいふうに言うと、

その方の笑顔がまぶしすぎて

目の当たりにしてしまったとき

ぼくがその笑顔を許容しきれなくて、

二の句が継げなくなり

笑ってごまかしてしまう。

みたいな感じかなあ。

砲丸投げをやってまして、

中学高校のころだ。

砲丸は重たいです。

5.45Kgある。

それを遠くまで投げようと思ったら、

腕の力だけではむり。

下手に手投げすると体こわす。

だから全身で投げるわけですね。

よく言われたのが、

砲丸は足で投げろ、と。

つま先のひねりからはじまり、

ひざ、こし、腹部、胸、肩、

ひじ、手首、そして指先。

この全てで砲丸を飛ばすためのエネルギーを

発生させて、

正しいフォームで各部位を連動させることで、

生まれたエネルギーを砲丸を放つ指先に収れんして、

重たい砲丸を遠くに飛ばす。

この各部の連動がうまくいくと、

肩に担ぐときは重たい砲丸が、

驚くほど軽い感触で投げられるし、

遠くにも飛んでいく。

まぶしい笑顔の女性従業員だけど、

ぼくが、

「じゃあ休憩ちょうだいします」

って言うと、

「うん、いってらっしゃい!」

と言いながら、

目を見開き口角を上げ

くちを逆半円形に開いて

歯をみせ――

まあ笑顔の表情をつくるんだけど、

顔面の各部位が連動してる。

すばらしいフォームの笑顔だ。

なにか砲丸的なエネルギー体が

放たれたようにぼくは錯覚してしまいます。

で、びくっとなって、

うわっなんだなんだ、へらへら、と、

なんかへらへらしてしまって、

笑っちゃう。のだろうか。

どうなんでしょうか。

なんかこう、その人が笑顔を作るとき、

音にすると、

にかっ、ていうか、

にぱっ、というか、

ボッッ!!

って感じ。

キュイくらいなら滅殺できるんじゃないか。

そう思いました。