それとあとかなり天然

今日はバイト休みだったけど、

バイト先に行ってきた。

まあショッピングモール内の喫茶店なので、

ショップモーリングがてらコーヒー飲みに行った。

夜に行ったのだけど、

今日の夜のシフトは、

人間をも丸のみにすると噂される女傑(店長)と、

ギャルゲーで言うところの

おっとり巨乳キャラ(性格のみ)の2人という構成。

性格巨乳のどじっ娘バイトは20歳のタマキちゃん。

はっきり言って最悪の組み合わせである。


タマキちゃんはウチの店に入ってまだ間がないけど、

同期の中でも、はっきり言って、

仕事の覚えはよくない。

おまけに土日の昼過ぎのピーク時には

すぐ軽いパニックを起こして、

動きが止まる。

不手際を注意してもテンパってるから、

感情をコントロールできてないのか

「あははっ…」と笑う。

そういうタイプの人っているし、

ぼくもそっち系だから、

今はフォローしながらちょっとずつ

覚えていってくれればいいかって感じだけど、

やっぱり、タマキちゃんのそんな仕事ぶりを見て、

反感を覚える人もいる。

店長がその最たる人で、

こってり濃厚な大阪民族のおばちゃんだから

とにかくせっかちなんだけど、

おっとりしててすぐテンパるタマキちゃんに

しょっちゅういらついてる。

目を離すと店長がタマキちゃんに

からあげ粉でも振りかけはしないかと心配だ。

いつ準備しだしてもおかしくない。

いや、生でいく恐れもある。

こりゃあおっとろしくて目ぇ離せねーぜ! です。

で、その最悪の組み合わせのシフトの今日、

ちょっと心配だったのでモーリングついでに

様子を見に行ったというわけ。

この組み合わせは3度目なのだけど、

前2回で既にタマキちゃんは店長が

トラウマになっている。

彼女の、前日前々日から止まない溜め息や、

学校に行きたくない小学生のような

「ちょっと体調悪いかも」的なフラグ立て、

「閉店作業わからないから無理……かも……」という、

効果の薄い回避行動を見ているから、

まじでイヤなんだなーというのはわかってた。

でも、そんなこんなでいま従業員として

けっこう首の皮一枚で繋がってる状態なのも

わかってるので、ぼくはむしろ背中を押した。

「用事ないなら休まんと出えや」と。

正直きょうバイト先行ったら、

店長と、結局タマキちゃんじゃない

別の従業員がいるんじゃないかって

思ってたけど、

タマキちゃんは、居た。

ぼくはカウンターの一番端に座って

コーヒーを注文。

炭火の遠赤外線効果でじっくり焙煎された

深煎りコーヒー豆で淹れる

コクの深いコーヒーだとかは置いといて、

席から厨房スペースで作業してる2人を見る。

店長、息をするようにタマキちゃんを叱ってるなあ。

指示された作業の内容を

取り違えてしまったことに対して、

「なんでこうしたんや?」と語気を強める店長。

「あの、だって、指示の仕方が……」とタマキちゃん。

「なんや?

 なんか言いたいことあるんやったら言いんか」

「あの、もっと具体的に言ってくれてたら……」

たしかにカウンターで聞いてて、

わかりにくい指示だった。

でもそこは謝っとくとこだぞと思った。

「そうか。

 で、あんた、わからんかったらどうするんや?

 間違えてからやったら遅いで。

 どうしたら良かった?」

「いや……」

どうみても追いつめられてパニックになってる。

質問の内容を考えられる状態じゃない。

店長は答が返ってこないから詰問してるけど、

完全に逆効果だ。

「………………」

何か言おうとしたまま固まるタマキちゃん。

「もぅ~! はよ答えんか!」

地団駄を踏む女店長。かわいくない!

「………………」

タマキちゃんはまだ固まってるけど、

その顔は、

店長の質問の答を必死で考えてる顔じゃなくて、

この店長ぶんなぐるorぶんなぐらないの

2択で迷ってる段階の顔だった。

でも、もうしばらくの沈黙のあと、

「……あの、わからないとこを先に、

 店長に訊いてたら良かったです……」

と答えた。

「そう! そうやん。

 そんなん小学生でもわかるで、しっかりしいや」

「…………」

今度はなぐるorなぐらないじゃなくって、

グーでいくor平手にしとくの顔してた。

まあ、それくらい昂った空気だしてたけど、

もちろん実行せず飲み込むんでいた。

本当に、そのうち抱えきれなくなった

フラストレーションが限界こえて

良くないことになるんじゃないかと心配になる。

ぼくはタマキちゃんに、

「まあ店長、ああいう性分やから、

 いちいち付き合っててもしゃあないって。

 あんま気にしなや」

とかテキトーなことを言っておいた。

タマキちゃんは

「マジで、きつすぎますよー」

とぐったりしてから「あの」

「え?」

「あたしmixiで日記つけてて

 シンゴ先輩がお笑いの××に似てるって書いたら、

 それ見た友だちがめっちゃ食いついてきて……

 写メとって良いですか?」

「良くないわ!

 知らんとこで笑い物にされたくないわ!」

知らないところで笑い物には

されたくないなあと思いました。