暗視ゴーグル着用時に急に出会ったらホワイトアウトして大変

バイト先の喫茶店に、

ものすごく高効率な

エネルギー供給源がある。

3分で3日分の充電が可能だ。

しかも、供給元の貯蔵エネルギーは

無尽蔵ときている。

なぜこのような、

夢のようなエネルギー運用が可能かというと、

そのエネルギーというのが、

電力とかではなく、

人間の活力とか元気のことだからだ。

要は、気持ちの問題ということ。


その、あくまで人間にとっての、

ぼくにとっての夢のエネルギー源。

バイト先のパートの女性で、

30歳くらいの主婦のモモエさんという方がいる。

モモエさんはだいたい夕方までのパートで、

ぼくは夕方からのパートなので、

ぼくはあまり会えない。

でもたまに丁度入れ違いのシフトのときは、

3分ほどだけ喋ったりする。

この3分で、

3日間なにかいやなことが起こっても

心が乱れないだけの余裕を得ることが出来る。

癒しの貯金ができるのである。

モモエさんはとてもかわいらしい方である。

関東の方である。

元保母さんである。

関東出身なので、標準語で、

元保母さんなので雰囲気がとても柔らかい。

鬼に金棒である。

いや、仔ネコに毛糸玉である。

心に溜まったどす黒い澱など

一瞬で消し飛ばしてしまう。

もともと心がきれいな人なら、

光をうけてキラキラ輝く水晶へと

進化してしまう。

そういうわけで、

3分で充分と言えば充分かもしれない。

いや、その時間は長いほど

もちろん嬉しいのだけど。

もし同じ時間帯で働けるなら、

給与をもてあましてしまうので

定期預金の口座を開設します。

先日もすれ違いのシフトで、

数分喋ることができた。

なのでしばらくは

このとき頂いたエネルギーだけで

活動することができる。

なんというか本当に、

なんでこんなに癒されるんだろう?

と思う。

別に大した話をするわけじゃない。

モモエさんはお綺麗な方だけど、

とびっきりの美人っていうとちょっと違う。

ただ、なんか、喋っていて、

ぼくなどに対して、とてもオープンなのだ。

屈託のない笑顔をぼくなどに向けるのだ。

直視できない。

向こうのオープンさ、屈託のなさに、

こちらの卑屈さが浮き彫りになるというか

単純に照れる。

まぶしい。

暗いところなら影絵をして遊べる。

でも、

同じ職場で働く従業員同士である。

このときは普通に会話をしている。

誰と誰がかというと、

ぼくとモモエさんがだ。

なので、

ぼくはモモエさんのご尊顔を

見てていいのだ。

たくさんの謎を生み出し続けている

その人のその顔をである。

疑問は尽きない。

なんでそんな癒されるのか。

なんでそんなに高効率なエネルギーを

生成・供給できるのか。

なんでそんなに屈託がないのか。

なんで影絵ができるのか。

謎は好奇心をくすぐる。

謎を知りたいと興味が湧く。

気付くとぼくは会話しながら、

ロードバイクショップで

憧れのハイエンドクラスモデルのフレームを

じっと見ているときのような、

道ばたで出会ったネコが可愛すぎて

目が離せなくなってしまったときのような、

なんでこんなに素晴らしいんだろう……

という心持ちで、

モモエさんの顔をまじまじと凝視していたので

気味わるがって今後喋ってくれなくなったら

どうしよう(ノД< ;)エーン