『ゆめにっき』その4

夢を描いた作品といえば、
筒井康隆原作、今敏監督のアニメ映画
『パプリカ』があります。
とらえどころのない夢を視聴覚化しようと
試みてる点では『ゆめにっき』と
共通するところがあると思います。

『パプリカ』の映像は
絵や動きがめちゃくちゃリアルです。
見ていてアニメでそこまでやるか!?
と驚いてしまうくらい精緻です。
それでもって夢の脈絡のない感じや
何でもありのめちゃくちゃな感じを
描いています。

でも夢を描く難しさは多分、
夢が極めて個人的なものであるって
部分だと思うわけで、
自分の頭の中に蓄積されてる記憶や感情を
ツギハギして出来上がってるのが夢だから、
他人が描いたものを見ても
それって他人の頭の中のもので出来てるものだから
ピンとこないんじゃないでしょうか。
だから精緻な映像で表現されても
しっくりこないかもしれないし、
そもそも夢の中の映像そんなに鮮明じゃなくて
もっと見たのか見てないのかすら
曖昧な感じのもののような気がします。

『ゆめにっき』に関して、
スーファミのRPG風ドット絵
っていうそのフォーマットが
最良だと思ったんですけど、
それは例えば、
ドット絵で描かれたキャラクターがいて、
でもそれはキャラクターそのものを描いてるわけじゃなくて、
「これはこのキャラクターを表している」
っていう意味を持った記号にすぎないわけで、
それが良い。
製作者側が自分のイメージだけで描ききってなくて、
ドット絵の簡素な表現を、
あとどう補完するかはプレイヤーの頭に任せてあるので、
プレイヤーのイメージも反映させることができます。
というか、リアルでないグラフィックで
表現の肝は配置された記号の意味や印象という
輪郭のはっきりしてなさが夢っぽい。
夢ってなんか、
雰囲気だけ印象と感情だけのものだと思うので。
だって目つむって見るもんだし。
まあ、要は、
人によって全く違うイメージのあるものを描くのに
きっちりした形を与えすぎてはダメなのでは、
ということです。
――と思います。