追いレイバー

機動警察パトレイバー DVDメモリアルボックス (初回限定生産)
機動警察パトレイバー DVDメモリアルボックス (初回限定生産)

ちょっと前TSUTAYAでレンタルして、
パトレイバー」全部観ました。
初期OVA、劇場版1作目、テレビシリーズ、
後期OVA、劇場版2作目、3作目。
ほんとは高い評価をよく耳にする
劇場版だけ観たかったんですけど、
順を追わないときもちわるいので。

おもしろかった。
でも何がおもしろかったっていうと説明しにくい
ような気がします。
パトレイバー」で扱ってるジャンルとかテーマに思い入れが
あるわけじゃないので、
二足歩行汎用作業機械が普及した仮の現代っていう舞台の
設定の細かさとか、
登場する兵器の仕様のこだわりとか、
警察組織の表裏とかに惹かれたわけでなく、
舞台しかりキャラしかりの妥協のない
作りこみのおかげで生まれる
「有る(居る)感じ」に惹かれたような気がします。

以下、各作品の感想。

-
≪初期OVA≫
東京湾埋立地特車二課棟、
間もなく到着する新型レイバーを待ちわびる
メカニック2人の熱いメカ談義からはじまり、
結局新型レイバーは届かず終いで、
それに搭乗(及び指揮)する予定の
主人公・野明、遊馬ら第二小隊が自分から取りに行く導入は
けっこう秀逸だと思う。
全7話中唯一、前後編にわたるエピソード、
「二課の一番長い日」は特車二課小隊長の
南雲と後藤が主役となり、
自衛隊の暗部や警察機構の腐敗に対抗する
屈指の名作、だと思います。
所属する組織を飛び出す展開とか何かと映画的。
劇場版2作目『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』と
共通する展開、シーンが多く、
たぶん『2』のモチーフ?

機動警察パトレイバー THE MOVIE
主要キャラもレイバーも大活躍する
劇場版3作品中もっとも
パトレイバーらしい真正面娯楽作品。
OVAで描かれた世界をもう一段掘り下げ、
コンピュータが普及した社会に切り込むというような
鋭い問題提起的な面も強いと思います。
急速に発展を続ける東京の裏側で
同時に急速に生まれる廃屋、廃墟に住み続けた
天才プログラマーは何を思うのか・・・という感じの。

≪テレビシリーズ≫
ほとんど消化する気分で観てました。
全てが浅い! 気がします。
キャラや舞台に関する箇条書き的な項目だけなぞって
お話が展開してるっていう印象。
太田がただの馬鹿だ。
極端に言えば、語尾でこう言わせとけばこのキャラになる、
っていうようなことやってるように見える。
でももちろん良質なエピソードもちゃんとあります。
宿敵グリフォン編はおもしろくて、
消化じゃなくて、気になりながら次々観てった。
イングラムグリフォン両レイバーのどつき合いは必見。
それまでのエピソードを見てきて、
レイバーというものが基本は土木作業用の工機で、
人型であっても人間みたいな格闘はしないっていう
イメージができあがっている分、良い。
しかし黒いレイバー「グリフォン」のパイロット、
バドの関西弁はひどかった。こんなひどいの聞いたことない。
TVシリーズ序盤のエピソードに
関西のヤクザの組長が登場する回があって、
その関西弁はきょうび上方落語でしか聴かれないような
こてこての関西弁で、
このアニメの方言は信用してたのに。
あと、伊藤和典押井守脚本の回はだいたいおもしろかった。
作画も良かった。

≪後期OVA≫
第1話目から、グリフォン再来。
数話にわたるバトルは展開、映像的にも迫力あった。
巨大ロボ同士の戦闘で、
キメ技が柔道の裏投げっていうのもかっこいい。
グリフォン関係以外のエピソードも
1話1話よく作られてておもしろかった。
なかでも「二人の軽井沢」というエピソードは、
後藤と南雲が、
本庁から特車2課へクルマで帰還途中に
台風で身動きが取れなくなり、
仕方なくラブホテルで一泊することになる、
という内容で、
普段と異質のシチュエーション下に置かれたふたりの
反応がなんか生々しくて良かった。

パトレイバー2 THE MOVIE≫
2回みたけどはっきり言って、よくわからなかった。
大まかな展開は理解できるけど、
登場人物たちの思惑や動機、
何がどうなったらどうなるのかとか
細かいことがわからない。
「もし東京が戦争状況下に置かれたら」
「いまの日本の平和の本質とは」
とか作品を通してメッセージ性が強く、
難しい問題に取り組んだ意欲作だとは思うけど、
どうも主張が強すぎる。
監督の押井守が自分で言いたいことを、
パトレイバーの舞台とキャラクターに
語らせているにすぎないような気がする。
本来物語ってそんなもんかも知れないけど、
そういう問題を楽しく見れる娯楽の形にして、
誰にでも分かりやすく
興味を持って考えてもらえるようにするっていうのが
物語の効能だと思うので、
ほぼ動きのないシーンでキャラクターが
延々むずかしいことを語り続ける押井節は、
それなら活字にして別に出版すればいいのに、
って気になる。
とはいえ、先に書いた、
初期OVAのエピソード「二課の一番長い日」との
類似点の多さから、
そもそもパトレイバーって
こういうことをやるための作品だったって
見れなくもない。
それがコメディ色の強いテレビシリーズで
別のイメージに変わってしまってただけなのか。
時系列ではこれが全シリーズ中最も未来の話で、
野明や遊馬らおなじみの面々は
第二小隊所属ではなくなっていて、
登場人物たちのその後と関係の移り変わり、
そして成長の物語としても楽しめなくもない。

≪WX? パトレイバー THE MOVIE 3≫
コミック版の「廃棄物13号」を土台とした
ほぼオリジナル新作。
今回主人公は捜査課の刑事2人で
特車二課の面々は脇役となる。
完全に客観的な目線で特車二課を見ると
なんかヘンな感じです。
雰囲気としては、サスペンスっぽい。
シリーズ通してリアルな世界感なので、
事件の中心となる突然変異の巨大生物の存在の
イレギュラーっぷりは圧巻。
映画を観た印象は、
これパトレイバーじゃなくていいのでは?
っていう感じ。
実際タイトルでも、
廃棄物13号を表す「WX?」っていう文字がメインで、
パトレイバー」はサブタイトルっぽくなってるし。
パトレイバー」としてではなく
普通のアニメ映画として良作、って感じです。

      *

というわけで、パトレイバーにどっぷりな夏でした。