チゲ鍋が引き起こすカオス

バイト先で、
先輩のユリコさんがタウン情報誌を見ていた。
「シンゴくん、来週ヒマ?
ここのチゲ鍋食べにいかへん?」
「え?」
「いまアッキーと行こか言うててんけど
ふたりだけっていうのもなんやしさ」
「え? 全然OKですけど
どういうメンツです?」
「いやだからあたしとアッキーと
シンゴくんの3人」
なんかわからんけど
先輩のお姉さん2人に鍋に誘われた。
いや大丈夫、
ふたりとも主婦で子どももいるので、
別に浮ついた話じゃないですよ(*^^)v(←なぐってくれ)
えー、ユリコさんは、
おもろいおばちゃんって感じのお姉さん。
アッキーさんは、天然キャラでドカタの嫁。
ご両人ゴキゲンな人だから、
誘われてうれしい、楽しみ。
いや、なにがうれしいのかというと、
ぼくにS的当たりがキツい
年上の後輩の女性ヤマダさんがさ、
このふたりのことめっちゃ大好きで、
しょっちゅう
「ユリコさんなんでそんなおもしろいんですかぁ~!?」
「アッキーさんかわいすぎですよぉ~!」
って感じで、そして、
その偏愛の反動で排他的になるのかどうなのか、
ぼくへの攻撃の手に容赦がない。
ヤマダさんのお気に入りのオカモトくんという後輩がいて、
飼い猫の話をしている。
オカモトくんが、
「うちのネコね、僕が椅子座ってたら足下よってきて
かかとのとこカリカリ噛んでくるんですよ」
ヤマダさんは、
「やーん、かわいいー!」
で、ぼくがジョークで、
「かかとの角質がそんなにおいしいんですかね」
「何言ってんのアンタ、キッモー! 最低っ!!」
「…………」
まあそんな感じですね。
まあヤマダさんというのは、
公私関係なく、喋って共感できて
いっしょに盛り上がれる人が正義というか
そういう人サイコー、ソウルメイト。
で、それ以外は人の顔にみえる石と同じ、
みたいな感覚を持ってらっしゃる。
集まりがあったら自分が加わってないと
気が済まない。
そこで今回の件。
ヤマダさんが無二のソウルメイト視してるふたりと
人の顔にみえる石(はい!ぼくです)の、
理解できない組み合わせのナベ会。
自分には声がかからない実情。
彼女の価値基準に大変革が起こることだろう。
「ア、アタシはあんたのことなんて認めないんだからね!!」
とか言うがいい。
うんうん、はいはい。と余裕のぼく。
年上だけど後輩であるヤマダさんの中の序列が
ようやく正しく並び変えられることでしょう。
ていうか、
こんなことばっか考えてぼくは、
家族で自分だけ飼い犬になつかれないお父さんか!
とおもいました。