「○○の霧」とかいってただの缶を売る

妄想とか淡い期待とかいう、

「こうだったらいいのになあ……」

というようなことって、

いざ実現すると、

それがずっと望んでたことだっていうのに

気付かなかったりする。

妄想は、

あるシーンをピンポイントで

想像するものだと思うんですけど、

実際にはどんなに状況にも

それに至るまでの流れってものがあって、

自然ななりゆきでその瞬間が訪れるものだから、

妄想してたシーンが実現しても

気が付いたらその時間は過ぎていたりする。

ぼく、ロードバイク乗って

市内の喫茶店巡りとかよくするんですけど、

お気に入りの店とかも何軒かあって、

休日にはよくロードバイクで

訪れたりする。

珈琲のんでまったりする。

でまあ基本ひとりなんですけど、

あくまで珈琲飲みにきてるだけなんですけど、

これが

女の子とふたりで来ているのだったらなあ……

と考えることもたまにはある。

たまに、である。

100%ではない。

お気に入りの喫茶店に行ったときは

97%考える程度だ。

ちょっと前の夜メールが来て、

最近知り合った女性――津軽さんからの、

「明日空いてますか?

 おいしい珈琲飲みにいきましょう!^^」

というメール。

なので翌日、ぼくのお気に入りの

喫茶店にいっしょに行きました。

でカレー食べて珈琲飲んだ。

津軽さんは珈琲は苦手だったらしいけど、

前に催されたホームパーティに

ぼくが自宅で淹れて持参した珈琲を

えらく気に入ってくれ、

それから珈琲飲むようになったんだと。

これはめちゃくちゃうれしいことです。

自分の淹れた珈琲が

人の好き嫌いを変えるなんて!

そのおかげで

いつもひとりでしてた

喫茶店巡りを誰かと出来るようになるなんて!

珈琲趣味にしてて良かった。

珈琲になりたい。

あー、珈琲に就職しようかな。

それくらい嬉しかった。

ぼく自身は

珈琲の味の違いはわかっても

これの何がおいしいのか

さっぱりわからないけど、

まあなんか褒めてもらったし

鵜呑みにしといて、

じゃあもっとおいしい珈琲を

また今度淹れてあげましょうとか

思いました。

そんなことは

どうでも良いのですが、

この日、津軽さんと別れて

自宅に帰ってから、

お気に入りの喫茶店で

女子とふたりでお茶するっていう

願望が実現してたことに気づいて、

うわ……と思った。

もっと堪能したら良かった。

もっと、時間を止めて

何らかの不思議な凝固剤まいて

その現場を保存しておけば良かった。

深呼吸すれば良かった。

缶に詰めて土産物として販売すれば良かった。

ていうとおおげさというか

全然ちがう感情ですけどね。