「○○ッシュ」だろうとぼくはジャパニーズ

皆さんはアイリッシュバーというものを

ご存知だろうか。

ぼくは知らなかった。

名前だけは聞いたことあった。

アイリッシュという言葉も、

アイリッシュ民謡とかで知っていた。

しかしアイリッシュバーである。

アイルランド風酒場ということなのだろうけど、

アイルランド風と言われても

なにがなんだかわからない。

スポーツバーがスポーツ観戦しながら

お酒を飲む場所であるように、

アイルランド風酒場では、

「魔女狩りの夜に」や

「瑠璃色の雪」のプレイを

大画面液晶で観戦しながらお酒を飲む

場所なのだろうか。

ただ、“アイル”ランドである前に

アイリッシュ”だから、

アイルランドという国のことを示していることが

推察されるだろう。

「FF」を始めとするファンタジーRPGでおなじみの

アイリッシュ音楽を、

店の中で生演奏してくれたりするんだろうな。

それを聞きながらお酒を飲むと。

そうすると自然、ジョッキは

小型の樽に取っ手を付けたタイプに限定される。

乾杯のときは樽ジョッキ同士を強く打ち付け

適度な量のお酒をこぼさないといけない。

2人でジョッキを持った腕同士を絡ませて、

スキップしながらくるくる回る必要がある。

とても牧歌的で素敵な情景だ。

でも、まるっきり異世界である。

(たぶん)そんな(感じの)アイリッシュバーが

茶屋町にあるという。

そこに行こうと

津軽さん(仮名)という女性に誘われた。

樽ジョッキを持ちながら2人で腕を組んで

アイリッシュ民謡に合わせてくるくる回る

心の準備はある程度出来ていた。

待ち合わせの場所で津軽さんと合流する。

「わたし間違えてたみたい。

 アイリッシュバーじゃなくて

 ブリティッシュパブでした。

 ブリティッシュパブ行こ!」

ちょちょちょちょっと待って!

組み上げた心の準備が

横方向からのちからを受けて崩れた。

ブリティッシュパブって何!?

困惑しても、

手元にグーグル先生はいないし、

辞書もない。

ブリティッシュパブでは

何を小型化したようなジョッキを使うの?

腕組んで回るときのステップはスキップじゃないの?

ブリティッシュ民謡って

何ファンタジーでおなじみだっけ??

ぼくは混乱した。

ブリティッシュパブに着いた。

まあ、普通のバーだった。

普通のバーってなんなのだろうか。

とにかくなんとなくイメージした感じのバーだった。

カウンターでジントニック

フィッシュフライをオーダーして、

津軽さんと雑談した。

雰囲気のあるバーの片隅、

こげ茶色の木の丸テーブルに肘を置きながら、

無駄に細長いグラスに入ったお酒で

喉をうるおしながら、

ぼくはバイト行くときと変わらない

ラフな格好なんだけど、

津軽さんはいつもと違って

黒基調のちょっとだけドレッシーな格好で来ていて、

しかも黒のファーを首に巻いていて、

アルコールのせいかもしれないけど

なんか良いなとか思いながら、

店は2階にあるので

窓からは茶屋町の往来を忙しく歩く人たちが

見下ろせ、

バーの中の時間がよりゆったりと感じられて、

なんだかこういう雰囲気って

はじめてだなあとしみじみとしながら、

今朝スーパーで4個1パックの卵買ったんだけど

自転車で帰るときに落としちゃって3個割れたけど

1個無事だった話などした。

喋って、2時間ほどで店をでて、

別れて、ひとり帰路についた。